国の政策と方向性
自殺対策
- 1.我が国の自殺の現状
- 2.自殺対策の重要性
- 3.自殺対策の概要
- 4.今後の政策の方向性
- 5.法令・資料、通知など
1.うつ病対策
自殺既遂者に対する調査からは、うつ病等の気分障害が特に重要な自殺の要因であることが明らかになっており、厚生労働省における自殺対策においても、その中核となっているのはうつ病対策です。
自殺既遂者における精神疾患の存在【図を拡大する】
【詳しくはこちら:心の健康の取り組みについて~うつ病対策~】
2.アルコール問題対策
うつ病等の気分障害とともに自殺の大きな要因となっているのは、アルコール依存症等が含まれる物質関連障害です。
うつ状態に陥った際に不眠や抑うつ気分の解消のためにアルコールを使用することは、うつ状態の悪化につながる行為として極めて有害です。
そのため、自殺対策の観点からアルコールの有害使用についての対策を積極的に実施する必要があります。
●自殺既遂者に対する調査からは、特に中高年男性の自殺者において、死の直前に飲酒量が増加していたり、飲酒した状態で自殺企図に至っていたり等、自殺に際してのアルコールの有害使用が少なからず認められることがわかっています。
飲酒が不眠や抑うつ気分の解消のために有用だという誤解を解消し、アルコールとうつ・自殺との関連について広く知ってもらうため、特に中高年男性をターゲットとしたリーフレット「のめば、のまれる」を作成し、普及啓発活動を始めました。
●アルコール依存症や薬物依存症の回復に有効と考えられている自助団体の活動の支援や、関係機関による依存症対策に係る地域連携体制の構築と効果的な依存症対策の開発・実施を目的として、平成21年度から「地域依存症対策推進モデル事業」を開始し、地域における依存症対策の推進を図っています。
●また、平成22年4月から、重度のアルコール依存症の患者に対して専門的な入院医療を行った場合に、診療報酬の加算が新たに設けられました。
3.自殺未遂者対策
自殺未遂者は、実際に自殺企図を行っているという点で最も自殺のリスクの高い者と考える必要があり、十分なケアが必要です。
平成17年から、救命救急センターに搬送された自殺未遂者に対して精神医学的評価に基づくケース・マネージメントを実施し、その有効性を検証する研究を実施しています。
【自殺企図の再発防止に対する複合的ケース・マネージメントの効果:多施設共同による無作為化比較研究:ACTION-J】
○平成18年12月から、「自殺未遂者・自殺者親族等のケアに関する検討会」を開催し、自殺未遂者が再企図しないために必要な支援等について。有識者の意見を平成20年3月にとりまとめました。
○研究で蓄積された自殺未遂者対応に関する現場でのノウハウや、この検討会の報告を基に、厚生労働省の研究班と日本臨床救急医学会との協同で「自殺未遂者への対応-救急外来(ER)・救急科・救命救急センターのスタッフのための手引き」を作成しました。
この手引きを基に救急医療従事者に対して自殺未遂者ケアに関する研修会を厚生労働省と日本臨床救急医学会との共同開催で実施する等、救命救急医療現場における自殺未遂者への対応技術の普及を進めています。
○また、厚生労働省の研究班と日本精神科救急学会との協同で「精神科救急医療ガイドライン-自殺未遂者対応」を作成し、精神科医療従事者に対する自殺未遂者ケアに関する研修会を厚生労働省と同学会との共同開催で実施する等に、精神科医療の現場についても自殺未遂者への対応技術の普及を進めています。
4.複合的な自殺対策
精神疾患に至るまでには経済社会的問題、生活問題、学校問題等様々な要因が積み重なっていることも多く、自殺対策としての精神保健対策を生かすためには、精神保健以外の領域における対策も併せて実施することが必要です。
○平成17年から、様々な視点からの自殺対策を組み合わせたプログラムに基づく自殺対策を実施して、複合的な自殺対策の有効性を検証する研究を実施しています。
【複合的自殺対策プログラムの自殺企図予防効果に関する地域介入研究:NOCOMIT-J】
○この研究を通じて、これまで僅かな実施例しか知られていなかった地域での自殺対策に関するノウハウが蓄積され、それらを基にした地域における自殺対策の基盤作りが進みつつあります。この研究で実際に使用されているプログラムを「地域における自殺対策プログラム」としてまとめ、厚生労働省のホームページに掲載しています。
5.労働者のメンタルヘルス
労働者のメンタルヘルスや自殺対策が重要な課題となっている中で、様々な支援事業の活用を図りつつ、事業場に対する指導、業界団体等の自主的活動を促進する等メンタルヘルス対策の強化を行っています。
【詳しい内容はこちら:職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策・心身両面にわたる健康づくり】
○平成19年には「職場における自殺の予防と対応」(自殺予防マニュアル)を改訂し、うつ病の症状や早期発見のための方法、産業医や専門医へ紹介する時期、方法等の内容の充実を図りました。
○平成21年度からは、リーフレットによるこころの健康に関する情報、ストレスチェックシート、メール相談の案内等の周知のほか、自殺等に係る悩み、不安等の相談に対し、カウンセラーによるメール相談を実施しています。また、平成21年10月には、メンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」を設置し、事業者、産業保健スタッフ、労働者やその家族等に対してメンタルヘルスに関する様々な情報を提供しています。
6.民間団体の活動に対する支援
○「いのちの電話」をはじめいくつかの民間団体において、自殺を防止するための電話相談活動などが行われています。「自殺防止対策事業」の中で、ボランティア等で先駆的・試行的な自殺対策の取組を行う民間団体に財政的支援を行っており、相談員に対する研修、フリーダイヤル電話相談の実施等の事業を行う複数の団体がその対象となっています。