摂食障害こんな症状ありませんか?


摂食障害の更に詳しい情報

 

摂食障害とは

疾患概念

単なる食欲や食行動の異常ではなく,1)体重に対する過度のこだわりがあること、2)自己評価への体重・体形の過剰な影響が存在する、といった心理的要因に基づく食行動の重篤な障害である。したがって、身体疾患や精神疾患あるいは医薬品服用に起因する食欲の障害、あるいは食行動の異常は除外される。
摂食障害は大きく分けて、神経性食欲不振症(AN;神経性無食欲症、神経性食思不振症、思春期やせ症)と神経性過食症(BN;神経性大食症)に分類される。前記の食行動の障害によって、ANは「過度の体重減少、または正常からの著しい減少」が認められること、BNは「むちゃ食いの反復や体重増加防止のための排出行為、あるいは不適切な代償行為がある」ことが、それぞれの診断に必要である。そのどちらにも明確に分類されない摂食障害(例:むちゃ食い障害)は、特定不能の摂食障害(EDNOS)として扱われている。
なお、近々改変される予定のDSMでは“むちゃ食い障害”をANやBNと同列の単一疾患カテゴリーとして分類しようとする動きがある。世界保健機関(World Health Organization;WHO)のICD-10診断基準では、摂食障害が「生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群」に分類されているように、身体的要因と精神的要因が相互に密接に関連して形成された食行動の異常としてとらえられている。

歴史

ANという名称が用いられたのは、1873年、パリ・ピティエ病院のLasegue医師とロンドン・ガイ病院医師のGull卿が初めてである。以後、20世紀に入ってSimmondsが下垂体機能不全説を提唱したがその後否定され、1960年代にHilde Bruchにより認知的側面に光が当てられた。
それは1)ボディサイズを過大評価する傾向に特徴づけられるボディ・イメージの障害、2)空腹感、満腹感、情緒的状態また性的感受性という身体内部の感覚を正しく同定し、反応することができないという内部感受性の障害、そして3)コントロール喪失感覚に反映される全体的な無力感、である。これはANの知覚的/思考的障害に注目したものであり、現代における本障害に対する認知行動療法の出発点となっている。以後、「衝動-葛藤モデル」「対象関係モデル」、さらには「自己心理学的モデル」など、精神力動学的な疾患理解へとつながった。
一方、Arther Crispは「発達モデル」の概念を提示した。ANの中心的精神病理は成人の体重の達成に伴う身体的心理的体験に根ざしているとして、「心理生物学的成熟に関連して生ずる恐怖や葛藤を制する試みである」という説である。ダイエットと、その結果として生じる飢餓は、患者が前思春期的な身体の体形やホルモン状態、そして(前思春期的な)体験に逆戻りするメカニズムであると、「発達の問題」してとらえたわけである。
1970年代に入り、Gerald RussellはANの種々の類型を報告した中で、本症の中心的精神病理として「肥満に対する病的恐怖」を強調したが、これはBNの明確な疾患概念へと発展し、DSM診断に取り入れられた。確かにGull卿の時代には、食事の制限は自己犠牲や身体的欲求の抑制といった「禁欲主義的理想」として患者にはとらえられていたが、1940年頃から“太っているとからかわれる”“やせ願望”“余分な体重に悩まされる”といった患者の言葉の出現が増加していることが見いだされ、摂食障害における“やせ願望”もしくは“病的な肥満恐怖”が近年の本疾患概念の中心となってきたといえる。
問題は、このように西欧を中心に展開されてきた摂食障害に対する概念が、わが国の患者像にそのまま当てはまるかということである。わが国ならびに香港の質問紙調査によると、制限型のAN患者においては“やせ願望”や“体重や体形への不満”は健常人と程度に差がなく、西欧と異なる。はたして、DSMを中心とする操作的診断基準によって摂食障害とされる疾患概念は単一の疾患単位として当てはめることができるのか、今後の課題である。

 
厚生労働省