アルコール依存症
「摂食障害」とは
病的な拒食・過食がありますか?
食行動の異常は、食事をとりたがらない「拒食」、逆に極端に大量の食物をとる「過食」に大別できます。少しくらいの拒食や過食は、多くの人が経験するものです。失恋をして食欲がなくなったり、ストレス解消につい食べ過ぎる、という経験をした人は少なくないと思われます。 ところが、こうした食行動の異常が過度になって、極端に体重が減少しても拒食がやめられない、過食の後に食べたものを全部吐いたり下剤や利尿剤を使って体重増加を避けようとする、という行為がみられるようになると、これは治療を要する摂食障害の疑いが濃くなります。
拒食・過食の背景にある心の傷
こうした極端な摂食行動の異常が現れるのは、背景に「太りたくない、やせたい」という体重への極端なこだわりや、「自分は太っている・醜い→自分には価値がない」という思いこみなどの心理的背景があります。また、特に若い女性の場合は、「やせていることが美しい」という社会的価値観も影響します。また、子供の頃に両親の仲が悪かった、親や周囲の人間から体重や体型のことをみっともないといわれた、という経験も摂食障害のひきがねになります。
10代には拒食症、20代には過食症が多い
拒食症は10代で発症する人が多く、過食症は20代に多い傾向があります。両タイプとも90%が女性です。ただし、最近は男性の摂食障害も増えてるという指摘もあります。拒食と過食は正反対の症状に見えますが、拒食から過食へ、過食から拒食へと変わることもよくあります。
生命の危険もある深刻な病気です
摂食障害は、ダイエットの失敗というような単純なものではなく、放っておくと心も体も病み疲れて、死に至ることもあります。とくに拒食症の場合、標準体重の60%以下にやせが進むと、低栄養による腎不全や低血糖、電解質異常による不整脈、結核などの感染症など、重い合併症を起こしやすくなります。 また、両タイプとも、アルコールや薬物への依存や抑うつ、怒りっぽい、人格障害などの精神疾患を合併しやすく、万引きや性的に奔放になる、自傷行為や自殺を図るなど衝動的な行動が多くなります。
摂食障害のサイン・症状
拒食症かな?と思ったら、まず体重をみてみましょう。
- 拒食症かな?と思ったら、まず体重をみてみましょう。
- 標準体重の80%以下は、やせすぎです。このくらいの体重が何ヶ月も続いていたら、拒食症の症状のひとつの可能性があります。 健康なやせの場合、標準体重の80%以下にになることはまずありません。
月経はありますか?
体重が標準体重の80%以下で、かつ月経がない場合、拒食症と判断されます。 - こんな症状があれば過食症かもしれません
- 体重は標準体重に近く、肥満でもやせでもない
- 家族のいないときや真夜中など人のいない時に、短時間のうちに大量に食べることをやめられない
- 特にストレスを感じると、過食したくなる
- 食べているときは何も考えずにいられて幸せだけれども、食べた後、猛烈な自己嫌悪に陥る
- 食べ過ぎて太ることが心配になり、のどに指を入れて吐く、下剤や利尿剤を使って無理に排泄しようとする
摂食障害の治療法
摂食障害の場合、患者さん本人は治療によって体重が増えることを極端に恐れるので、なかなか治療に納得してくれません。
学校や家族・友達が専門医とともに力を合わせて、患者さんがきちんと治療を続けられるように支えていくことが大切です。
また、10代の患者さんの場合は特に両親を初めとする家族との関係が病気に影響していることも多いので、家族に対しても患者さんとの接し方や家庭環境に関するカウンセリングが必要になります。
治療にあたっては摂食障害の専門医やカウンセラーを配属している病院を選びましょう。体重減少が極端な場合や家庭環境が治療に適していないようなばあいは入院治療も行われます。
治療は、体重に対するこだわりや間違った自己評価などを正常にするための心理療法を中心に、心身の回復をめざして薬による治療や栄養指導などが必要に応じて行なわれます。
私が摂食障害になったとき
私の過食症経験 (19歳女性)
私は小学生のときからずっと母のグチの聞き役だった。兄もいるのに、母は「男の子に話してもわからない。M美はたよりになる」と、私にばかり同居の祖父母の悪口を長々と聞かせる。本当は聞きたくないけど、母がかわいそうで言えなかった。
それなのに、母に大事にされているのは私じゃなくて兄のほう。兄は勉強もできるし、サッカークラブで活躍している自慢の息子だから。夕飯のメニューだって兄の好物ばかり。鶏の唐揚げやオムライス、肉たっぷりのギョウザとか。
兄はサッカーをやっているから太らないけど、私は太ってきた。なんだか私って母に利用されているだけみたいな感じで、いやになった。
14歳のとき、過食が始まった。母のグチを聞いた後、思いっきり食べて、全部吐いたら、気分がスッキリした。そのうち、家にある食べ物だけじゃ足りなくなって、食べ物を万引きして補導された。万引きと過食がばれて、母にすごく叱られた。
「お母さんが悪口ばかり聞かせるから、私は太ってストレスたまって、過食や万引きだってお母さんのせいだよ! お兄ちゃんばかり大事にして」って怒鳴って大暴れしてやった。それからは堂々と過食嘔吐して、リストカットも始めた。
ある日、お酒を飲んで手首を切って、緊急入院になった。病院が合わなくて、脱走を繰り返した後、いくつめかの病院で、ある看護士さんに話ができるようになった。
それまで「どうせ私の話なんか誰も聞いてくれない」と思っていたけど、黙って真剣に聞いてくれる看護士さんのおかげで、過食がだんだん減ってきた。
いまは過食しそうになったら、看護士さんや先生に相談するようにしている。
母は病院の家族会に参加していて、私のことを少しは心配してくれているんだなとは思うものの、私にはまだやっぱり母を許せない気持ちが少しある。
相談相手をみつけよう
家族間の問題に巻き込まれた子どもが、悩みを打ち明けたり、相談できる相手を見つけることはたいへんですが、保健室の先生や友だちなど、話せる人を探してみましょう。
誰かに自分の悩みや不満を話すことは怖いことです。
「拒否されたら傷つく」という思いから、何も言えないでしょう。
もしかしたら、言おうとして実際に拒否された経験もあるかもしれません。
でも、学校のカウンセラーや病院で摂食障害の治療にあたっている先生や看護師などの医療スタッフなら、そんな悩みを理解できるかもしれません。
どこかに必ず、話を聞いてくれる人はいます。
できることを少しずつ増やしていこう
病院での治療を受けながら、過食や自傷の衝動を抑えられたら、自分をほめてあげましょう。日々できたことを記録して、回復への励みにしましょう。
家族や友人が摂食障害になったとき
娘が拒食症になった母親の経験 (母48歳・自営業 娘20歳)
20歳になる娘は、拒食症で入院治療を受けています。初潮は小学5年生のときで、その頃はふっくらしていたので、夫は娘をアニメの「ドラえもん」の妹の「ドラミちゃん」と呼ぶようになりました。
夫は酒を飲むと口が軽くなり、娘の初潮のことや、ふくらみかけた胸について、からかいます。娘はそれほど気にしているように見えなかったのですが、小学3年生の弟までが一緒になって「ドラミ」と呼び、体型をからかうようになったため、夫と息子にはやめるように注意しました。でも、あまり効果はなかったようです。
娘は中学生になった頃から、急にやせ始めました。学校に給食はなく、お弁当をもたせていましたが、後で聞いたら、食べずに捨てていたそうです。
まるで成長が止まったように背が伸びず、やせていきました。だけど、まさか昼食をとらないでいたなんて思いもしませんでした。
あまりにやせたので「かくれてダイエットをしているんじゃないの」と、問いただしましたが、娘は否定するだけ。高校に入った頃、低血糖で倒れ、通院させるようにしました。それでも、娘は処方薬を捨てて下剤を飲んだり、吐いたりして、どうにもなりません。自室に閉じこもる「ひきこもり」になってしまいました。
現在の病院には昨年入院しました。私も病院主催の勉強会などに参加するようになり、娘に話を聞くと、拒食が始まった中学生時代のことについて「父や弟にいやらしい目で見られているようで、とても嫌だった」と打ち明けてくれました。
治療を拒否していたのに、入院に応じたのは、家から離れたいという気持ちがあったからとのこと。娘にそれほどつらい思いをさせていたとは、本当にかわいそうなことをしてしまいました。
「退院したらひとり暮らしをしたい」と言うので、「先生がひとり暮らしをしても大丈夫だと言うならいい」と言いました。娘は入院して半年で体重が40kgまでに増え、5年ぶりに生理がきました。
変化に気づく
摂食障害の人は、本当の感情をかくし、自分の病気も認めません。それでも、外見には以下のような変化が現われます。
- 急激な肥満・やせ
- 髪が抜ける、爪が弱くなる
- 肌が乾燥して黄色っぽくなる
- うぶ毛が濃くなる
- 指に吐きダコがある
- むくみがある
このような変化があれば、摂食障害の疑いがあります。医師や地域の相談窓口に相談し、どうしたら治療に導けるか、アドバイスを受けましょう。
摂食障害の人への対応
子どもが摂食障害になると、親は自分が責められているように感じてつらく、早く治すよう急がせてしまいがちですが、強制は禁物です。とりあえず生きていればよいくらいの気持ちで、気長に回復を見守りましょう。
- ありのままの状態を受け入れる(病気や不登校などを責めない)
- 周囲の人と比べない
- できないことは要求しない。できたことに注目してほめる
- 本人が安心できる環境を与える
家族も協力者をもつ
相談できる先をなるべく多くもって支えあい、病気についての正しい知識を得るようにしましょう。
- 家族療法の経験が豊富な専門家にかかる
- 家族会に参加し、同じ立場の家族とのつながりをもつ
- 勉強会やセミナーなどで、摂食障害から回復した人の話を聞く
困った時の相談先
- 病院・診療所の精神科や心療内科
- かかりつけの医師
- 自助グループ(日本摂食障害ネットワーク (EDNJ: Eating Disorders Network of Japan で地元のグループを捜すことができます)
- 家族会(日本摂食障害ネットワーク で探すことができます)
- 各都道府県の精神保健福祉センター
- 学校の保健教諭・カウンセラー