こんな症状ありませんか?こんな症状ありませんか?


リストカット

 

リストカット(自傷行為)とはなんですか。
どうしてそのような行動が生じるのですか。

リストカットとは、手首(リスト)を自分で刃物など鋭利なものを使って傷つけるタイプの自傷行為です。
自傷行為は、自分に意図的に苦しみを生じさせる行為ですから、多くの人に理解できないものと受け取られることでしょう。
しかし最近は、特に若い人々の間で自傷行為が相当に多く発生していることが問題になっています。

自傷する人々の半数以上から報告される理由は、「つらい感情から逃れたかったから」「死にたかったから」の2つです。
つまり、自傷行為は、このような極端に絶望的な精神状態の中で生じるものなのです。

しかし反対に、このつらさや自傷の痛みを訴えないケースもあります。それは、極端なつらさのあまり、「解離」と呼ばれる現象が生じて、自傷時の記憶や痛みが薄らいだせいだと考えられます。
そのようなつらい感情の多くは、精神的なショックをきっかけに生じています。その大多数は、対人関係のトラブルです。また、恥ずかしい、悔しいといった思いが引き金になることもあります。

自傷行為には、もっと根の深い問題がかかわっていることがあります。 その第一は、自分を大切にすることができないという特性です。自傷する人には、自分を無価値だと考えて、自分など傷ついて当然だと感じていることが少なくありません。彼らの中には、成育環境の中で大切に扱われなかったと考えられる人が含まれています。そのようなケースでは、自分を粗末に扱う行動が成育環境のせいで生じていると考えることができます。

次は、周囲の人に自分の苦しみを表現し、助けを求めることが不得手であるという特性です。実際に長期間、援助を求めなかったせいで、自傷行為が慢性化してしまったと考えられるケースはよく見受けられます。また、感情が激しく動揺しやすいという特性が認められることもしばしばあります。自傷行為の多くは、この激しい感情に押し流されて生じたものと見ることができます。

これらの特性は、パーソナリティ特性や自己同一性(自分がどんな人間であるか、どんな社会的役割を担っているかといった、自己の感覚や意識)の障害と結びついていることがあります。 自傷を行う人の中には、精神科治療の導入を検討しなければならないケースがあります。それは、つらい感情や死にたい気持ち、自分を粗末に扱う特性などが精神疾患のせいで生じていると判断されるケース、そして自殺したい気持ち(自殺念慮)が強まるケースです。

このように自傷行為は、その人が一種の危機の状況にあることを示すサインだということができます。それを行う人々は、さまざまなサポートを切実に必要としているのです。

 
 

自分が自傷行為をしてしまいたくなる時
どうすればよいでしょうか。

あなたが自傷行為をしたくなるのには、必ず原因やきっかけがあります。耐えがたいつらい思いが生じていることが、最も多く認められる原因です。トラブルによっていやな思いをさせられて、絶望感や怒りが強まることがきっかけになる場合もあります。

自傷行為には、絶望感などのつらい感情を紛らわせるというメリットがあるといわれることがありますし、無価値で罪深い自分は傷ついて当然だという考えもありうるでしょう。
しかし、自傷行為はよい選択ではありません。
それにメリットがあるとしても、痛みや体表に残る傷など、自傷行為のデメリットも著しいものです。
しかも、そのつらさを紛らわせるというメリットは一時的なものにすぎません。

そもそも人間は心地よさや幸福を追求し、それを享受しようとする存在です。自傷行為は、人間本来の姿から離れたものというべきです。つらい感情や死にたい気持ちを乗り越えるための方法として、もっとあなたにふさわしい方法があるはずです。

ここでは、解決法に到達するための重要な2つの筋道を示したいと思います。

第一は、あなたの周囲の信頼できる人に助けを求めることです。
友人や家族の中には、きっとあなたの事情を理解してくれる人がいるでしょう。相談すると、自分の感じ方や行動がおかしいと思われる、自分の弱みを知られてしまうといったことが心配かもしれません。しかし、極端につらい目に遭ったり、自分に絶望したりすることは、どんな人にも起きることです。恥ずべきことではありません。あなたが十分なサポートを受けることは、あなたを大切に思う多くの人が望んでいることなのです。

第二の道は、「自分を取り戻す」という作業を積み重ねることです。
それは、その場の気持ちに流されて行動するのではなく、場面ごとに自分にふさわしい行動を考えたうえで行動するのを心がけるということです。たとえばこれは、自傷行為を生じる可能性のあるつらい感情や死にたい気持ちが強まった場合、それを乗り越えるためのさまざまな方法の中から、一番自分らしい解決法を選択しようすることです。

ただ、このような解決法は、料理のレシピのようにすぐに出てくるものではありません。自分の条件や特徴に合った、いわばオーダーメイドの解決策でなくてはなりません。いつも容易に解決策が得られるとは限らず、試行錯誤が必要になるかもしれません。しかし、この作業は、一つひとつが本質的な問題解決への糸口になりうるものです。その際、周囲の人々の意見を参考にすることができるなら、あなたはこの「自分を取り戻す」作業をいっそう効果的に進めることができるでしょう。

最後に、精神保健の専門スタッフへの相談を提案したいと思います。現在、自傷行為を乗り越えるための多くの方法が提案されています。また、うつ病や家族関係の悩みといった問題がそこに関与している場合は、それへの対策を講じることが解決への近道になります。 これらの対応方法については、学校のスクールカウンセラーや養護教員、地域の保険相談所の窓口などに相談してみてください。

 
 

身近な人が自傷行為をしている時
どのように対応すればよいでしょうか。

身近な人が自傷行為をしていると知らされることは、けっしてまれではありません。 そのような場合、多くの人が驚きや不安にとらわれるだろうと思います。しかし、自傷をしている人たちは、切実にサポートを必要としていることを思い起こしてください。みなさんは、できるだけ速やかに自傷者をサポートする体制を整えなくてはなりません。

この場合、自傷者を叱る、責めるという態度は適切ではありません。自傷者は好んでそれをしているのではなく、つらい感情などのせいでそれを行う状態に追い込まれているのです。
彼らは、自傷後にそれを深く後悔するのが通例です。
確かに、自傷行為を好んで行うように見える場合はあります。
繰り返しているうちに、後悔の念が薄らぎ、その行為がやめられなくなっているケースです。

そのような人には「自傷行為をしてはいけない」という意見を告げなければならないでしょう。
しかしその場合でも、多くが「わかっているけれどやめられない」というのが実情であり、単に自傷行為を戒めることに効果は乏しいと考えられます。
自傷行為を止めるかどうかは、本来、自傷者本人に任せるしかない問題です。そのため、周囲の人々の援助は、自傷者本人の力を回復させ、伸ばすことが主眼になると考えなくてはなりません。

それにはまず、自傷者を支えること、次いで問題への取り組みを促すことが必要でしょう。問題に取り組む自傷者の心構えが不十分な場合には、改善は徐々にしか進みませんし、一時よくなっても再発することもありえます。このような場合には、焦らずに少しずつでも前進するよう心がけることが必要です。

周囲の人々は、自傷行為を止める決め手をもっていませんが、その基礎にある自傷者の問題の解決を促すことに大きな役割を果たすことができるのです。
自傷行為に精神疾患が関与していると考えられる場合や、死にたくなる気持ち(自殺念慮)が強い場合、そして自傷行為が周囲の人々に悪影響を与えていると判断される場合には、精神保健の専門スタッフに相談することが必要です。学校ではスクールカウンセラーや養護教員、地域なら保健相談所や精神保健福祉センターの担当者に相談してください。

 
厚生労働省